洋画

おすすめの映画!ニコラス・ケイジ『ダブル/フェイス』~不妊女性と代理母の、子供を巡る争い~

ニコラス・ケイジを愛してやまないラジ男です。

って、決してそういうわけではないんですが、ニコラス主演映画のレビュー2作目(1作目『ヴェンジェンス』の感想記事はこちら)ですからね。読者のみなさんにはそう思われても仕方無いんじゃないかと思っています。

“ニコラス・ケイジ主演”とは書きましたが、記事のタイトルにも書いた通り、主演は実質、不妊に悩む母親(=ニコラスの妻)と代理母の2人でした。

映画概要

N・ケイジら一流のキャストが出演した、戦慄のサスペンス。どちらも医師である夫婦と彼らの幼い娘の家で暮らすことになったシングルマザーには、衝撃的な秘密があり・・・。


WOWOW番組情報より

映画内容

いずれも医師の夫婦、ブライアンとアンジェラの夫婦は幼い娘コーラと幸福に暮らすが、ドナーから提供を受けた卵子からコーラは生まれていた。アンジェラは他の土地から引っ越してきた、幼いマディを連れたシングルマザー、ケイティを気に入り、自分が仕事に復帰することもあり、家事を手伝うことを条件にケイティ母子を自宅に住まわせる。だが次の子どもの代理母を依頼していた女性が殺されるなど異常な事件が起きるようになる。

WOWOW番組情報より

出演/関連情報

(2017年 カナダ)
【原題】Inconceivable
【監督】ジョナサン・ベイカー
【脚本】クロエ・キング
【出演】ニコラス・ケイジフェイ・ダナウェイジーナ・ガーションニッキ・ウィーランナタリー・エヴァ・マリー

WOWOW番組情報より

原題と邦題

ニコラス・ケイジの代表作『フェイス/オフ』を覚えておいででしょうか?ジョン・トラボルタと共演したアクション映画です。

内容は、刑事(=ジョン)とギャングの親玉(=ニコラス)との攻防を描いたものでしたが、物語の行きがかり上、ジョンとニコラスの顔が入れ替わってしまいます。結果、

ジョン(=刑事)の顔をしたニコラス(=ギャング)
vs
ニコラス(=ギャング)の顔をしたジョン(=刑事)

という構図になります。故に、原題・邦題共に『フェイス(顔)/オフ(剥がす)』というタイトルが付けられていました。


【販売元】ウォルト・ディズニー・ジャパン/【発売日】2010年12月22日/【時間】138分

このこともあって、本作の原題は『Inconceivable』(=「想像が及ばない」「信じ難い」)であったところ、『ダブル(2つの)/フェイス(顔)』という邦題にしたのでしょう。ご丁寧に「ダブル」と「フェイス」の間に“/(スラッシュ)”を付けてまで。

ですが、この邦題の付け方は悪くはないです。むしろ、分かりやすくて良い。

原題をカタカナ英語にしてそのまま邦題に流用している映画をよく見掛けますが、この映画にもそれを適用してしまうと、『インコンシーバブル』になってしまう。これじゃあ日本人にとっては全くピンと来ないですよね?

これを『ダブル/フェイス』という風に『フェイス/オフ』に寄せることで、日本人にもピンと来る邦題にしたのは非常に良かったと思います。実際、『映画概要』と『映画内容』の項にも書いた通り、居候のシングルマザー ケイティには“2つの顔(=ダブルフェイス)”があるワケですから、内容にも沿った邦題の付け方であると言えます。

代理出産

本作の根幹を成すテーマであり、この知識に乏しいと若干モヤっとする場面があったので、一項設けて書きます。

とはいえ、「余計な知識を付けずにいたい」という方もいらっしゃることでしょう。その場合はこちらをクリックして、「登場人物」の項まで読み飛ばして下さい。

代理出産とは

「代理出産」とは、 何らかの理由で子供を授かることができない夫婦が、代わりに第三者の女性に妊娠・出産してもらう方法です。

こそだてハック 代理出産とは?メリットや問題点、費用は?日本では禁止されている?

本作のブライアンとアンジェラ夫妻にとっての「何らかの理由」とは、紛れもなく女性である妻のアンジェラの年齢や体質が原因であると本作から読み取れました。

恐らく、自身も医者であるアンジェラは、医学生研修医を経た30歳前後からは医者としてのキャリアをガンガン突き進んだことでしょう。

その後、30も後半になった頃からなのか、40過ぎてからなのかは分かりませんが、子供が欲しくなってきた。しかし、夫ブライアンと何度か子作りに励むものの、子作りをして産むのには既に年齢的に厳しい頃合いに差し掛かっており、結果、4度にわたる流産を経験してしまった。この辛い経験を経て、卵子提供(※後述)により何とか第1子のコーラを授かり、作中でも描写のある5度目の流産の後は、代理出産により第2子を授かることを決意するのです。

ちなみに、夫の側に問題(=精子が無い、少ない等)がある場合もあり、一口に「代理出産」と言っても、いくつか方法にパターンがあるようです。

1.夫婦の卵子と精子を体外受精させて代理母の子宮に入れる方法
→精子と卵子に問題は無いが、母体に問題がある場合(精子〇 卵子〇 母体×)
2.夫の精子と卵子バンクの卵子を受精させて代理母の子宮に入れる方法
→卵子と母体に問題がある場合①(精子〇 卵子× 母体×)
3.妻の卵子と精子バンクの精子を受精させて代理母の子宮に入れる方法
→精子と母体に問題がある場合(精子× 卵子〇 母体×)
4.夫の精子を代理母の卵子に人工授精させる方法
→卵子と母体に問題がある場合②(精子〇 卵子× 母体×)

現代ビジネス  ダウン症の子を受け取り拒否…問題はらむ「代理出産」ビジネス

※各矢印以降の文言は筆者による補足

本作でアンジェラはパターン2の方法で代理出産を試みます。

下記はAmazonで「代理母」「代理出産」で検索して評価の高かった書籍です。本は本屋で買うのが好きな私ですが、地元の中型書店には置いてませんでした。こういう場合は、ネット注文が便利ですね。

卵子提供との違い

卵子提供とは、エッグドナ-(卵子提供者)から卵子の提供を受け、ご依頼者であるご主人の精子により体外受精を行なった後、奥様の子宮に受精卵(胚)を移植し、その奥様がご自身で実際に妊娠、出産の過程を経てお子さんを授かる治療方法です。

卵子提供・代理出産エージェンシーJbaby エッグドナーQ&A

先程の「代理出産」の4パターンを見ればお分かりの通り、代理出産に至るケースはいずれも母体に何らかの問題があるため、代理母(=第三者)の体を借り受けるものでした。

卵子提供の場合は、母体には(あまり?)異常は無いものの、卵子に何らかの問題があるためにエッグドナー(=第三者)から卵子を提供してもらい、自らの体内で赤ちゃんを育てる形式(精子〇 卵子× 母体〇or△)のようです。

アンジェラは卵子提供により第一子のコーラを設けましたが、「妊娠中と産後の体調が優れなかったために、薬を服用した。コーラが1歳になるまで入院をしていた」と述べています。この後、作中で5度目の流産を経験したこともあり、第2子出産は代理出産を決意するのです。

不妊治療との違い

一般的な不妊治療とは、以下の3パターンがあるそうです。

・タイミング法・・・医師から妊娠しやすい日についてアドバイスを受けた後、そのベストタイミングな日を狙って性交渉を行う。
・人工授精・・・元気な精子を人工的(=性交渉せず)に子宮に注入する。
・体外受精・・・上記2パターンでの妊娠が難しい場合、体外で予め受精させてから受精卵を子宮に注入する。

丘の上のお医者さん やくしまる先生に聞こう!妊娠・出産の正しい知識より概略を抽出して引用

「一般的な」と書きましたが、この他に「排卵誘発剤」という薬を用いる方法もあるようです。私はむしろ、このような薬を使う方法しか頭にありませんでしたが、上記の引用を読むと薬以外の方法が一般的なようですね(同時に薬を併用するのかもしれませんが)。つまり、代理出産と卵子提供との大きな違いは、夫婦の精子と卵子でもって、妻の体内で着床を試みる(精子〇or△ 卵子〇or△ 母体〇or△)ところにあると言えます

これも作中では描写はありませんが、アンジェラは恐らく何度かは不妊治療を試したはずです。あるいは、最初に子作りをしようと思った時には既に40歳前後で最初から不妊治療を試みるも、4度とも流産に終わったのかもしれません。

こちらも参考にしたかった書籍です。これらの他に評価が高くて良さそうな本があったのですが、出版年が古いほど、Amazon以外だと取り扱いが無い物が多いですね。やはり、Amazon強しと言ったところでしょうか。

前置きは以上です。それでは本編をお楽しみください。

登場人物

ブライアン(演:ニコラス・ケイジ):医者。子沢山の大家族を夢見ていたが、アンジェラの不妊体質によりそれが叶わずにいる。しかし、アンジェラを責めることはなく、むしろ労り、気遣い、そして娘のコーラ共々愛している。
アンジェラ(演:ジーナ・ガーション):医者。ブライアンの妻。妊娠しにくい体質で、4度の流産を経験している。卵子提供を受けてようやく娘のコーラを授かった。作中5度目の流産に遭った後、代理出産により第2子を授かることを決意する。
コーラ:ブライアンとアンジェラの娘。卵子提供によって生まれたため、アンジェラとの血のつながりは無い。
ドナ(演:フェイ・ダナウェイ):ブライアンの母。居候としてブライアン夫妻が迎え入れたケイティを最初は怪しく思っていたが、徐々にその存在を認めていく。
ケイティ(演:ニッキー・ウィーラン):リンダの勤めるリトミック教室でアンジェラが知り合ったシングルマザー。絵画で生計を立てることを夢見ている。
マディ:ケイティの娘。コーラと実の姉妹のように仲良くなる。
リンダ(演:ナタリー・エヴァ・マリー):元はパーソナルトレーナーをしていた女性だが、アンジェラへの指導を通じて娘のコーラとも交流を重ねるうちに、子どもとも関わり合える仕事をしたいと思うようになり、リトミックへと転向した。

感想

これより先は多分にネタバレを含みますので注意して読み進めて下さい

ケイティの過去

冒頭からケイティの後ろめたい回想シーンで始まります。

泣きじゃくる赤ん坊の娘マディをあやしながら荷造りをし、何処かへ旅立とうとしています。

「パパが帰ってきちゃう。2人で幸せになるのよ」

という言葉から、旦那から逃げようとしているところだと分かります。

ここで上手く逃げられたら良かったんでしょうがね。そうは問屋が卸すはずもなく、旦那が帰宅します。後のケイティのアンジェラに対する告白から明らかになるのですが、旦那はDV野郎だったのです。DV野郎だからこそ、荷造りをして出て行こうとするケイティの様子を一目見て分かったのでしょう。

(ああ、コイツはオレから逃げようとしてるんだな)

そう思った矢先、案の定ケイティも逃げようとするもんだから家の中を追っかけ回してキッチンへ。旦那に体を抑え込まれたケイティは不利な体勢ながらも、手を伸ばしてつかんだ包丁で旦那の腹をグサリ!絶命する夫と虚ろな表情のケイティ・・・。

冒頭5分にも満たないシーンですが、ケイティは人を殺めています。この時点で思ったことは、「赤ん坊もいることだし、うまく素性を隠して生きていくも最後は自白にせよ何にせよ警察に捕まって、でも、ニコラス・ケイジに情状酌量されて何となくハッピーエンドかなぁ」です。WOWOWの番組内容は全く見ずに、ニコラス・ケイジの名前だけで録画・視聴しましたからね💦

アンジェラとケイティの出会い

場面は変わって現在。朝のジョギングから帰ってきたブライアンが、ベッドに横たわるアンジェラとコーラに優しくキスをします。身支度を整え、ブライアンは仕事へ、アンジェラはコーラをリトミック(の近くの広場?)に連れて行きます。

アンジェラが他所の子と遊ぶ我が子をスマホで撮影していると、その子の母親が寄ってきます。そう、他ならぬケイティです。しかし、初見ではこのシーンで彼女がケイティとはハッキリと認識できませんでした。なぜなら、髪型も色も変えていたのですから。ハッキリと分かっていたとしても、ケイティに何かしら良からぬ陰謀があると、この時点で気付くことは無理でしょう。ただ単に、どうにかこうにか逃亡生活を続けているうちに、たまたまアンジェラと知り合ったに過ぎないとしか思えないはずです。

そこへ黒髪でグラマラス、かつスポーティな女性がやって来ます。リトミックの先生のリンダです。基本的に健康的なエロスを感じる容姿に映りましたが、場面によっては女装したクリスティアーノ・ロナウドしか見えませんでした(笑)このタイミングでケイティとリンダの馴れ初めはよく分かりませんが、2人は既に知り合いであったことが窺えます。


意気投合した3人は、アンジェラの家でお泊り会を開きます。子どもたちはテレビを観、大人たちはそれぞれの人となりを話すうちに、みんな眠りの中へ・・・。そこへブライアンが帰宅。他の面々を起こさぬように、妻を寝室へと促します。

ここでクローズアップされる女性の顔。そして、見開く青い瞳。これは完全に私の注意不足でしたが、最初これはリンダだと思ったんですよ。「おっとぉ、スポーティに見えたリンダに何かしらの陰謀アリかぁ!?」と。そしたら違ったんです。目を見開き、寝室へと消えるブライアンとアンジェラを冷たい眼差しで見送ったのはケイティでした。ケイティの企みはこの時から既に始まっていました。2人の出会いは偶然ではなかったのです。

互いの告白

夫妻が目覚めると、階下から子供の泣き声が。驚いてダイニングに行くもそれは杞憂で、ケイティが朝ご飯を作る傍ら、子供たちがじゃれ合っているだけでした。この後、ひと場面挟んでドナと医者仲間も交えた屋外ランチの場面に移りますが、ドナがケイティの作った料理を誉める一幕があります。それを受け、「レストランで働いていたことがあるの」と答えるケイティ。殺人を犯した過去に比べれば他愛も無いことですが、ケイティの素性を知る上で一つのポイントとなります。

また、先程飛ばした「ひと場面」の中では、ケイティが写真を撮られることを拒否する一幕があります。こちらは殺人犯であるが故の振る舞いとして重要なワンシーンです。また、同じ場面ではケイティが子どもたちの顔に動物のペイントをしています。絵が上手であるという一面が見られるシーンなわけですが、これはケイティの面が割れていくのに後々重要な意味合いを帯びていきます。


食事後の薄暗い時間帯になると、リンダは「明日はハーフマラソン」とのことで帰ります(描写はありませんが、恐らくドナと医者仲間も帰宅済み)。ケイティも帰ろうとしますが、アンジェラが「コーラも喜ぶ」と言って彼女に泊まるように引き留めます。その申し出を受け入れ、リンダを見送った後、同じベッドで眠るコーラとマディを見つめる悲しげな表情のケイティ。これもケイティの胸の内を窺い知れる重要な一コマです。

一方、階下では食器洗いと片づけをするブライアンとアンジェラ。ドナが「素性を知らないケイティは何だか不気味だ」と言っていたことをアンジェラに告げます。するとちょうどそのタイミングで、ケイティがやって来ます。汚れの付いた包丁に手を伸ばしたアンジェラの姿を見て、手に持っていた雑誌を床に落とすケイティ。夫を包丁で殺めた記憶がフラッシュバックしたのでした。そんなこととは露知らず、ケイティを気遣ったアンジェラは「外の空気を吸いに」とケイティをプールサイドに誘います。

何とはなしに(?)胸のペンダントに触れるケイティ。

マディ 12年3月27日

との刻印が。それを見たアンジェラが「それは?」と尋ねると、「元夫がくれたの」と答えるケイティ。ごく自然な返答の仕方でしたが、後の回想シーンでコレがウソであることが分かります。

それを皮切りに、アンジェラが踏み込んだ質問をします。「ダメ男だったの?」と。ケイティは正直に答え、DVも受けていたので夫から逃げ出し、車やモーテルで寝泊まりをしていたこと、行く先々で親切な人に助けられて生きてきたことを告白します。夫からどうやって逃げ延びたのかはさすがに明かしませんでしたが、それ以外の部分は真実を語っていると感じる告白でした。

あまり触れられたくない過去を話してくれたケイティに対し、アンジェラも告白します。自身は子どもができにくい体質で、様々な不妊治療を試みるも、これまで4回流産したこと。コーラは卵子提供によりようやく授かった子であること。また、まだ夫にすら言っていないが、再び(恐らく自然に)妊娠したことを。

それを聞いたケイティは心から同情しているように見えました。恐らく、このアンジェラの告白にはケイティの逆鱗に触れるようなニュアンスが含まれていなかったため、実際本心でアンジェラの気持ちを慮っていたのでしょう。

切り替わる「スイッチ」

リトミック中に突如アンジェラが苦しみ始め、結果、5度目の流産をします。やはり、アンジェラは妊娠に耐え得る体ではなかったのです

ベッドでアンジェラを慰めるブライアンの様子を見て憐みの目で見つめるケイティ。ケイティの中でオンに入りかけていた「陰謀のスイッチ」がゆっくりとオフに切り替わる瞬間でした。


ある日の昼下がり、庭園を歩くブライアンとアンジェラ、そしてケイティとリンダ。ケイティはみんなに切り出します。「遠いコロラドの地で絵画の仕事をもらったので引っ越すことにした」と。本当に行先がコロラドかどうか、絵画の仕事を得たかどうかの真偽は別として、ケイティは確かにアンジェラから身を引くつもりであったと思います。

それを聞いたアンジェラは慰留します。「コーラも懐いているし、自分も徐々に医者の仕事に戻るつもりだから、自分が居ない間子守をしてくれると助かるから」と。さほど迷うことなく「根負けした」と提案を受け入れるケイティ。「陰謀のスイッチ」が再びオンへと切り替わる瞬間でした。

観終わった後だからこそ、スイッチがオフだのオンだの言えますが、初見ではなかなかそれに気付けないシーンであるかと思います。

先程「真偽は別」と書きましたが、恐らくケイティは、この時点でアンジェラを色眼鏡でみることはなくなり(かけ)、マディと2人で特に当ても無く、再び何処かへ消えるつもりであったことでしょう。けれど、アンジェラが仕事に復帰することを告げたために、ケイティの心に再び仄暗い気持ちが湧き上がってきたのです。


ケイティを受け入れることをブライアンがドナに話すと、ドナは3つの点で難色を示します。

・アンジェラは子育ての面でケイティに依存しているのではないか
・流産のショックで、以前のように薬に依存しているのではないか
・やはり、ケイティは得体が知れない。それだけにこじれた時に厄介だ

ブライアンは「心配要らない」とドナをなだめますが、ケイティの歓迎会でドナはケイティに質問を浴びせます。

ドナ「家族はいるのか?」
ケイティ「父親はおらず、母親は薬物依存であったため、里子に出された 」
ドナ「何故この地に来たのか」
ケイティ「仕事のため。残る予定ではなかった」
ドナ「なぜ?」
ケイティ「(それには答えず)今は家族の一員のように感じるし、仕事に行くアンジェラの代わりにコーラのおもりが必要だから(残ることにした)」

どれも決して全くのウソをついた回答はしていませんが、当然隠さざるを得ない部分に関しては一切口にしていません。

最初の質問に対する答えは、完全に真であると思うと同時に、映画を観終わった今にして思えば、今のケイティの人格形成に大きな影響を与えた彼女のバックグラウンドの一つであると感じます。

本性を現すケイティ

居候とは言ってもねぇ・・・さすがは夫婦そろって医者だけのことはある。ケイティが借り暮らしすることになった建屋は、敷地内にあるそれはそれは立派なゲストハウスとやらだったんですわ!くぅ~っ!バカなことを考えないで、画家として1人立ちできるまではおとなしく、ありがたく過ごしていれば良かったものを・・・。

ってのはさておき、アンジェラを完全な標的と見定めたためか、ケイティは段々好き勝手やるようになってきます。

まず、夜に敷地内の屋外プールでトップレスで泳ぎます。なんかもう、悪い方に吹っ切れたんでしょうね。その様子を「夜の営み」をアンジェラに拒まれたブライアンがバルコニーから目撃してしまいます。ガン見することなく、すぐに中へと引っ込みますが。

なんてことがあったかと思えば、ある日アンジェラが仕事から帰宅し、洗濯物をケイティのところに持っていこうとゲストハウスに近付くと、中から音楽が聞こえてきます。窓の隙間から中を覗くと、騎乗位でゆっくりと動くケイティの姿が!ケイティが振り返ったので目が合うや否や、すぐに踵を返すアンジェラ。

そこに、子供たちを連れたドナが帰ってきます。なるほど、家に誰もいない時間を見計らって男を連れ込んでいたのか!まさかブライアンを誘惑して!?と思っていると、ケイティから電話がかかってきます。「2人で話せる?」と。

ケイティの元に向かったアンジェラはすぐさま謝ります。「早く帰ったら誰もいなくて、音楽が聞こえたんで窓に近付いたら・・・」と。度量がありますね。そして、それを見て「動揺した」と告げます。「相手が女だったから?」と返すケイティ。・・・まさかのブライアン寝取り展開ではなかったものの、女だったのか・・・。アンジェラは気付いていたようでしたが、私が見た画面上の視界では、相手が男声か女性かも分からないようなアングルでした。

逢引の相手がブライアンではなかったこともあり、この場は和やかに終わりました。「本性が現れ始める」と言っても、ナイトプールの一件も含め、特にまだ誰も傷つかない程度のエピソードでした。正直、ここまでの展開であれば、ケイティの「スイッチ」は完全にオンにならずに済んだかと思います。しかし、次のシーンで事態は急変します。

これ以後、クリックするとネタバレが加速します


湖のほとりでで寝そべるケイティの元へ、女装した水着姿のクリスティアーノ・ロナウドリンダがやって来ます。親密にハグをし、キスをする2人。バッグを枕にケイティに横たわるよう促すリンダ。

ケイティ「アンジェラに知られた?」
リンダ「その話かと思ったの?彼女は知らないわ」

ハグとキスの具合からして怪しさが漂っていましたが、この会話で確証に変わりました。この2人はデキていたのです。十中八九、逢引の相手もリンダだったのでしょう。この2人の馴れ初めの話は劇中で描かれていませんが、恐らく、ケイティがマディをリトミック教室に通わせる中で、2人の仲が親密になっていったのでしょう。

「その話」ではないとすれば、リンダの本題は何か。

それは、アンジェラがもう一人子どもを作るということでした。それを聞いてケイティは「前回あんなに苦しんだのに?」と尋ねます。それを受けて、

リンダ「受精卵が一つ残っている」
ケイティ「コーラと同じドナーの?」
リンダ「そうよ。でも今回は自分では産まない(=卵子提供ではない)。代理母を使うの。それはね、私よ。すごく光栄でしょ」

何とも自然な流れというか会話、ですよね。けれど、ケイティは話を遮るようにリンダに「少し泳いで来たら?」と促し、リンダは快く泳ぎに向かいます。泳ぎに向かうリンダの背中を、複雑な表情で見つめるケイティ・・・。

この時点でもまだ、複雑そうなケイティの胸の内が何となく分かる気がします。パートナーのリンダが、いくらアンジェラ夫妻が親しい知人とはいえ、男女ともに他人の受精卵を自らの胎内に宿して代理母となる・・・。「代理出産」の項で言えば、パターン2のケースですね。しかし、ケイティの胸中はもっと複雑なものでした。


リンダが浜辺へ戻ろうとすると、水際に下着で佇むケイティの姿が。明らかに様子がヘンです。ケイティの気持ちを察し、「代理母になるのがイヤなのね?分かったわ、断る」となだめるリンダでしたが、ケイティはそこから動こうとしません。そして、口を開きます。

ケイティ「私がドナーよ。私の卵子。私の子どもよ」
リンダ「ありえない」
ケイティ「コーラは私の子よ。あなたが妊娠する子も」
リンダ「あなたにはマディがいる」
ケイティ「妊娠したのは別の人よ。メーン州の女性。“何よりも子供が欲しい”とウソをついた。だから取り返した」
リンダ「返してくれたの?」
ケイティ「いいえ」
リンダ「コーラも奪うつもりなの?」
ケイティ「アンジェラは復職しないと言った。私がいなければコーラは?赤の他人が育てる」

「卵子提供」の項でも書こうと思えば書けたのですが、今がそのベストタイミングなのでここで書きます。

『卵子提供』にしろ『代理出産』にしろ、「子供が欲しい」と望んでいるのは自分の卵子・母体では赤ちゃんを産むことができない母親です。ケイティのような第三者は自らの卵子か母体、あるいはその両方を提供し、「子供が欲しい」と望む母親の手助けをする役割を与えられているに過ぎません。

実際、先程引用したJbabyのサイトにはQ&A形式で次のように書かれています。

Q.エッグドナーの卵子によって生まれてきた子供の親は誰ですか?

A.卵子提供によって生まれてくる子供に対しての全責任は卵子提供を受けたご依頼者にあります。エッグドナー(卵子提供者)は卵子を提供した時点で、生まれてくる子供に対してすべての責任・権利を放棄することになっています。同時に将来的に子供に対しての養育費などを請求されることもありません。

Jbabyより

Q.エッグドナーは生まれてきた子供に会えますか?

A.いいえ。特別な契約をされない限り、ドナーさんが将来生まれてきた子供に会いたいと希望されても会うことはできません。生まれてきた子供が会うことを希望された場合も同じで、ドナーさんと子供が会うことはできません。

Jbabyより

私個人の意見だけでなく、こうした専門機関のサイトでもこのように厳に明言されているということは、現実にケイティのような「暴走」をしてしまう女性がいるということなのでしょう。

でも、それも無理からぬことだと思います。

まず、「卵子提供」についてですが、ケイティはメーン州の女性とアンジェラに卵子提供することで、それぞれマディとコーラが生まれています。卵子提供なので産みの苦しみこそ味わってはいませんが、確実に自分の血が流れています。母親が望んだからこそ卵子を提供したはずなのに、その子らがないがしろにされているとしたら・・・確かに溜まったものじゃありません。

先程のケイティとリンダの会話からも分かるように、明言は避けていますが、ケイティはメーン州の女性から“何か良からぬ方法”でマディを「奪い返し」ています。多分、その母親はマディをないがしろに扱っていたために、ケイティの逆鱗に触れたのでしょう。

そして、目下のアンジェラとコーラ。5度目の流産の後にアンジェラが復職を決めたのは、恐らく気分転換のためと、自らの胎内で子を成すことへの諦めからです。自分にはまだ幼いコーラがいて正直後ろ髪を引かれるが、「ケイティがいるから大丈夫!」そんな風に少し気軽に考えてケイティを慰留したのでしょう。

しかし、アンジェラからのこの申し出が、オフになりかけたケイティの「スイッチ」をオンの方に切り替える引き金となってしまった。それでもまだ、この時点ではオンに切り替わり切ってはいなかった。少し腑に落ちないが、シッターとして傍で我が子(=コーラ)を見守れるのだから。

けれど、リンダから聞いたアンジェラの「代理出産話」によって、今や「スイッチ」は完全にオンに切り替わってしまった。

「子供が欲しいのにできない苦しみには同情する。だから代理出産に踏み切る気持ちも分かる。だからと言ってお前は育児を人任せにして働きに出るのか!?しかもその子の卵子は私のだぞ!」

リンダが泳いでいる間に、浜辺でこうした怒りが沸々と湧き上がっていったのは想像に難くありません。下着姿で入水したケイティの右手には、リンダがバッグの中に携帯していたダンベルが握られていました。上記の会話の末、リンダに「あなたは病気よ」と言われたケイティはそれを静かに否定し、「ごめんね」と謝ってリンダをダンベルで殴打。湖面に沈みゆくリンダを押さえつけ、殺害するのでした・・・。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

途中までは物語のラストまで書き切る予定でいましたが、ここまででまだ映画の半分でラストまでの道のりはまだ長く、正直疲れたので止めます💦

しかし、冒頭の「映画内容」の項に書いてあるシーンまでは書き終えましたし、何よりケイティの悲しい異常性までは書き切れたので、区切れは非常に良いと思っています。


WOWOWの番組内容を読んでしまうと、ハナからケイティが(悲しいけれど)悪人だと分かってしまいますが、映画を観ていれば割と早い段階でケイティの怪しさに気付くのでさほど問題ではありません。

また、本作のDVDの表紙には、

「ニコラス・ケイジ 2人の女の罠に嵌る」

との煽り文句が踊っていますが、それは大きなミスリードです。


【販売元】アルバトロス/【発売日】2018年4月4日/【時間】106分

煽り文句としてはもちろんこれで構いませんが、正しく表記するとしたら、

「ニコラス・ケイジ 2人の女の板挟みに遭う」

でしょうか。それぐらいニコラスは本作ではあまり目立ちませんし、それゆえ、『ヴェンジェンス』のように銃をぶっ放すこともありません。

その代わり、とでも言うべきでしょうか。今回夫婦役を演じたニコラスとジーナですが、この2人はフェイス/オフでも共演していたんです!しかも同じく夫婦役で!と言っても、劇中の大半、ニコラスの中身はジョン・トラボルタなんですがね💦

フェイス/オフではあまり良くない最期を迎える夫婦でしたが、ダブル/フェイスでは仲睦まじく互いを労わり合う夫婦です。両作で監督は違いますが、今回の監督さん、フェイス/オフを踏まえてかそうでないかは知りませんが、良いキャスティングをしましたねぇ😢

そんな本作ですが、「結末が気になる!」「手元に置いてぜひ観たい!」という方はぜひDVDの購入を!

「WOWOWで観られるの?」という方はぜひご加入を!昨年10月に放送された作品でしたが、本作は3月31日までメンバーズオンデマンドで観られます!

クリックで拡大表示


WOWOW公式サイトへ☟


この他、ニコラス・ケイジ出演の作品が直近で3作放映されます。

『ヴェンジェンス』(1/19、2/5)は既に観たのでアレとして、『8mm』(1/21、2/28)と『オレの獲物はビンラディン』(2/18)ですか・・・笑
『8mm』は「撮り貯めてまだ観てないリスト』にあるのでコレも置いといて、『オレの獲物はビンラディン』はタイトルからしておもしろそうなので要チェックですね🎬

ダメだ、ブライアンっぽさのカケラもねえ(笑)

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